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Nesmluvená setkání (TV) 意外な遭遇

チェコ映画 (1995)

近未来(実際には、もう少し遠い未来)の異星人とのファースト・コンタクトを描いたSF映画。ただし、古いTV映画なので、派手な特撮シーンは一切なく、主人公の少年ペトル・リーチャニク(Petr Říčánek)の不思議な「人生」を描いた人間ドラマになっている。会話が中心の映画だが、全編、全裸か半裸で素足という悪条件の中で、これだけ堂々と話し、演技ができるというのは大したものだ。映画のもう一つの主人公である異星の生命体がどのようなものなのかは一切明らかにされない(それが、かえって面白い)。それでも、惑星上に一人だけ存在する生命個体であるペトル・リーチャニクと、人類の宇宙船の乗員4名との間の相克と友情のドラマは心温まるもので、一見に値する。しかし、1995年12月にチェコのTVで放映された際の3倍速のビデオ映像しか存在せず、画質がきわめて悪いのが残念だ。

移住を前提とした地球からの大々的な調査団が訪れる10年ほど前、夫婦と1才の幼児ロビーを乗せた宇宙船が、惑星アルファに墜落大破し、ロビーだけが生き残った。育てたのは、太古の文明の生き残りで、惑星の地表面を荒れたまま放棄し、地下に閉じ籠もり外界との一切の接触を断っている謎の存在だ。そこに、地球からの宇宙船団が来訪する。予備調査の際には無人と思われていた惑星アルファだが、エヴジェン博士以下3人の調査チームが着陸すると、不思議な現象が続発する。そして、突然姿を見せた全裸の少年。博士と4時間接触しただけで、自由に会話ができるようになる天才児だが、外見は人間でも、潜在意識は異星人と直結している。少年は、生き残ったロビーの10年後の存在で、人類との接触を断ち、人類に立ち去ることを願う異星人からの「使節」でもある。そして、「使節」としての役割を逸脱し、人間を知ろうとするロビーの好奇心は、「気分が悪くなる」という異星人からの警告により妨害される。そして、博士の「ロビーを犠牲にしても、異星人とコンタクトを果たしたい」とする欲望が暴走していく…

ペトル・リーチャニクの役は苛酷そのものだ。宇宙船の室内だけでなく、荒野、森林、岩山の至る所を全裸もしくは、上着1枚だけの姿で、素足のまま動き回らなくてはならない。撮影場所はチェコなので、夏でも結構涼しく、風邪を引かなかったかと心配になる。髪は伸び放題、顔には深い切り傷もあり、一度も洗ったことがなさそうな体は汚れているが、顔立ちはひょうきんで好感が持てる。


あらすじ

科学者のエヴジェン、船長のヤコブ、ロボット係のスタス、モニター監視係のマイカ(すべて、ファースト・ネーム)の4人からなる調査隊が、惑星アルファに着陸すると、すぐに異様な現象が発生する。船の入口には人間のみを通過させる防御バリアが設置してあるにもかかわらず、誰かがいるような感じがし、女性の悲鳴が聴こえてくる。「アレックス」「アレックスどこなの? 痛いわ!」「何が起きたの?」「誰か いるわ!」「誰かがいる! 引きずられてる!」。宇宙船の外の荒地では、ロボットが作動不良を起こし(2枚目の写真)、木の枝の奇妙な切れ端や、変わった石、さらに、湖から遠く離れた場所なのに魚が発見されている。
  
  

スタスを置いて出かけた3人は、導かれたように、堆積した岩塊の中(黄色の矢印が、その入口)に旧式の宇宙船の残骸を発見する。中から見つかったのは2体の白骨化した男女だった。パイロットは、衝突の直後に死亡したが、なぜか、瀕死の状態なのに、すべてのデータを破壊していた。女性は、動けないほどの骨折を負いながら、船の出口まで移動して息絶えていた。宇宙船に帰った後で、マイカは、親しいスタスに、「宇宙船の破壊は事故じゃないわ」「私達も、偶然見つけたんじゃない」と話した後で、「ここには、かつて生命があったの。そして、突然消えた」「すべてが、いにしえの死に染まっている」「死の臭いよ。もっと悪い、過去の生命の臭いね」「この惑星に慣れるなんて できないわ」「幸せを感じられないもの」と感情をぶつける。彼女は、何も情報のない段階から、早くも惑星の本質を感じ取っていた。
  
  

翌朝、隊員が朝食をとっていると、そこに突然、全裸の少年が現れた。今までの予備調査では無人で、人類の移住可能な惑星のはずだったのだが… 少年は奇妙な木の枝を両手に持ち、それを、お払いをするように振るうと(1枚目の写真)、船から走り出て行く。隊長の命令を無視して、思わず追ってしまうスタス。少年は森の中へと消えて行った(2枚目の写真)。少年が去った後、冷静な船長は、「あの存在は、解剖学的に人間と非常に似ています」「なぜかといえば、防御シールドは、人類だけが通過でき、他の生命体を通さないからです」と言った後で、「移住は諦めるしかないですな」「全作業を 直ちに中止しないと」「この惑星には 先住者がいる」と進言する。しかし、隊長は、「確かに、この惑星への移住は 問題外だ」「だが、留まる」「素晴らしい機会が 目に前にあるんだ」「未知の知性体と接触できる、またとない機会だ」「宇宙船を訪れ、声を模倣して聞かせるのは、我々と連絡しようと試みているのだろう」と、自分のいいように解釈する。船長が、「もし、彼らが知性体だと証明できたら、本部は、我々に退去を命じるでしょう」「我々の替わりに、接触の専門家が…」と言いかけると、「そんな手間は 不要だ」「接触の専門家は もうここにいる」「ヤコブ、規定に従い、私が指揮をとる」と宣言する。この独断的な隊長を演じているのが、『大好きだった人たち(Vsichni moji blízcí)』で主人公ダビデの頑固な父を演じていたヨセフ・アブルハム(Josef Abrhám)。独りよがりで頑固なところはそっくりだ。
  
  

翌日、基地から連絡があり、先日発見した宇宙船が、2034年5月6日に消息を断ったペリカン型宇宙船で、乗員はアレクサンダー・センチ、マリア・ルイザ・センチ、それに、2033年4月21日から、ロバート・センチ(ロビー)が加わったと教えられる。それを聴いて隊長は、「ということは、彼は先住民ではない、人間だ」「彼らの子供なんだ」と述べ、少年との早急な接触を決意し、自ら探しに出かける。隊長が去った後、スタスは、「信じられない。1歳の子が 生き延びたって?」「誰かがいた。だから、子供は 生き延びたんだ! 彼らが 救ったんだ」と疑問をぶつける。船長は、「もし、そうなら、あの子は、人間であって、人間でない」と分析する。3人がモニターの前で話し合っていると、そこに少年の姿が映し出される。それを見て、「2人の愛の結晶なのね」と、思わず口に出すマイカ(1枚目の写真)。少年は、例の枝を振りながら、何かを話そうとしている(2枚目の写真)。聞こえてきたのは、赤ん坊の泣き声だ。そして、次には、たどたどしい言葉で、以前マイカが口にした言葉を、くり返した。これだけでは、単に真似ているだけなのか、知性があるのかは分からない。
  
  
  

隊長が森の中で少年が現れるのを待っていると、期待通り、突然現れた。「やあ。ようこそ。君を1時間待ってた」と話しかける。そして、自分を指差して「私」と言うと、少年もすかさず「私」と答える(2枚目の写真)。その後、場面は、隊長が船に戻ってきたシーンに移行する。「重要な情報だ。ロビーはもう流暢に話せる」「それに、内容を完全に把握している」「ただ、話せても、自分自身のことは理解できていない」。マイカ:「僅か4時間で 話せるように?」。隊長:「そうだ」「第二に、ロビーは自分が、惑星で唯一の存在だと信じている」「信じてるんだ、自分以外には、誰もいないと」。「第三は朗報だ。明日、公式に訪問してくれる」。そして、「感情は禁物だ。友好的でなくちゃならんが、あくまで冷静に」と釘を刺す。以下、ロビーの言葉を訳すにあたり、どう話させるか迷った。隊長から個人教授されたので “大人言葉” にすべきとも考えたが、4時間でぺらぺらになるほどの知能なら、“子供言葉” も話せると勝手に解釈した。それに、後の方のシーンでも、ごく普通にやりとりしているので、“子供言葉” にしないと逆に違和感が生じてしまうと考えた。
  
  

いよいよ公式訪問。ロビーが、木の枝を持って、ゆっくりと入ってくる(1枚目の写真)。最初の言葉は、「すごいや」。監視装置を見て、「これ、何?」。次に興味を持ったのが、テーブルに置かれた食べ物。船長が「食べ物だよ」と説明すると、「目に見えるの?」「いろいろ あるんだ」「これも、食べ物?」「同じとは思えない。変だね」。「ほら、手に取って」と言われ、慌てて避けるロビー(2枚目の写真)。そして、床に膝をつくと、祈祷師のように枝を振った後で(3枚目の写真)、床に枝を並べる。すると、枝が勝手に動く。超自然現象だ。ロビーは、「やっと分かった。これが食べ物なのか」と納得する。隊長が、「ほら、こうやるんだ」と言って、食べ物を口にすると、「ダメ! そんなの許されない。悪いことだ」と批判する。隊長は、「やめよう。君が正しい。じゃあ、何を話そうか?」と訊くと、『炉ばたのこおろぎ』と答える。ディケンズの名作短編だ。
  
  
  

そして、「いつ ここから出て行くの?」と訊く。ロビーは、この星の生命体が、人間を早く追い出すために寄こした使節なのだ。「君から すべてを学んだ時だよ」。「僕のこと すべて知ってるじゃない。僕が どうやって来たかも」。「だが、君がどうやって生きてきたのかは知らない」「なぜ ずっと隠れてたんだ?」(地球からの先遣隊に姿を見せなかったため)。ロビーの次の言葉は、『赤ずきんちゃん』(1枚目の写真)。ロビーが、昔見た本の題名を口にするタイミングは、答えにくい質問に答える時。「前に たくさん人間が来て、気分が悪くなった。だから 会わなかった。でも、戻ってくると分かってた。4人でも多すぎる、1人でも。4人は嫌だ。『赤ずきんちゃん』。でも、我慢しないと」。さらに、「僕ここで1人だけ。誰とも話さない。だから、誰もいなくなると気分がいい」(2枚目の写真)。ロビーのありようがよく分かるシーンだ。この後、ロビーはスタスの着ている上着に興味を持つ。「なぜ 体をくるんでるの?」。「服だよ」。「何のため?」。「寒くないし、見た目がいい」。「服がないと、見た目がよくないの?」。「場合によるね」。「みんな 服を着てるの?」。「全員だよ」(3枚目の写真)。ここで、スタスが思いついて、着ている上着を脱ぎ、ロビーに着せてやる。ダブダブだが 何とかお尻まで隠れる。ロビーは、「星って何なの? なぜ水は低い方へ流れるの? 目はなぜ見えるの?」と訊いたが、「質問は一杯あるけど、答えはわずか」「早く答えて。気分が悪くなってきた」と言って、いなくなる
  
  
  

しかし、宇宙船で 人間に対して友好的に接してきたロビーには、庇護者からの警告が。いつものように、洞窟に帰るため湖に入って行くと、急に水面が泡立ち、流されて進めなくなったのだ(1枚目の写真)。衝撃のあまり呆然とするロビー(2枚目の写真)。
  
  

結局、その日、ロビーは宇宙船に戻ってきた。初めて会う女性のマイカを見て、幼児の時の声で嬉しそうに「ママ」と言うロビー(1枚目の写真)。「質問に答えるのは、君についてすべてを学んだ時だけだ」と隊長に言われ、「じゃあ、質問に答えるよ。急がないと。すべて話すから」と言い、父母と乗ってきた宇宙船について話し始める。1才の頃の映像も混じる(2枚目の写真)。宇宙船がこの惑星に接近し、母が、「誰かがいる! 引きずられてるわ!」と叫ぶシーンも。
  
  

話は、初めて “その後” に踏み込んだ。「ずいぶん時間が経って、僕は泣き疲れた。眠っちゃった。目が覚めと、寒くてお腹が空いてた。食べ物と暖かさを強く望んだら、叶えられた」。「食料と暖房は、誰が?」。「僕が望んだんだ。望んだことは、すべて叶えられるんだ」(1枚目の写真)。これでは異星人がいるかどうか分からない。しかし、ロビーは嘘を付いているのではなく、これが事実なのだ。「どこに住んでる? 家はどこにある?」と隊長。「地中深くに」。「居心地はいい?」。「すごく楽しいよ。『くるみ割り人形』。最高の家だ」。「そこで寝るのかね?」。「そう、全部そこでする。食べて、寝て、考える」。その後で、隊長は、「君の家に招いてくれ」と迫る。「望んだことは叶えられるけど、人間に関しては何もできないんだ」と拒否するロビー。「じゃあ、君を(地球へ)連れて行こうか?」とさらに難題を吹きかける。ロビーは、「僕、離れられない。遠くに行けないんだ。今日、湖で悟ったんだ。びっくりしたけど、離れられないって分かったんだ。ひもじさを、ずっとひどくした感じ。だから、一緒には行けない」ときっぱり断る(2枚目の写真)。そして最後に、「なぜ石は落ちるの? 熱い水は何? 訊きたいことは一杯あるけど、もう質問しない。気分が悪いから。あなたは来られないし、僕も行けない。共通の言葉がない。てことは、僕のすべてを知ることは無理なんだ。教えてよ、僕はどうすればいいの? だって僕、一昨日より昨日、昨日より今日の方が、気分が悪いんだ」と苦境を訴える(3枚目の写真)。ロビーは去って行くが、もう船に戻るつもりはなかった。
  
  
  

ロビーが帰った後、隊長は、「我々は、少年とだけ交信していた訳ではない。彼の救い主とも 同時に交信していたのだ。明らかに、その生命体は 独自の交信形態を有し、少年の神経系とはある種のテレパシーによって接続している。そうでなければ、あの子が、質問に答えられただろうか?」と分析する(1枚目の写真)。その後、スタスと2人だけになったマイカは、「ロビーから人間性を引き出すのは、残酷で危険だわ」と同意を求める(2枚目の写真)。一方、ロビーは、独りになって、「僕はどうすればいいの?」という質問を考えていた。以前と違い、孤独を感じるようになってしまったロビーの目には、涙が光っている(3枚目の写真)。
  
  
  

翌日、船内では、隊長が、いつも通り熱弁をふるっている。「この文明は、人間の子供の生理機能を変容させた。彼の脳の機能を極限まで高めたのだ。もし、人間の脳の機能が増大できたら、人類にとって、何を意味するか 分かるかね?」。船長に、構成主の形態を訊かれ、「推測なんだが、巨大な超個体だろう。少年も、小さい頃から、環境の一部だと考えてきた」と正しく分析する。それでも分からないことは多い。「なぜ、少年を 人間のままにしたのか? なのに、なぜ接触を拒む?」。それに対する船長の答えは、明確だ。「多分、我々のことを よく知ってるんでしょう」(皮肉が効いている)。しかし、隊長は、「少年の信頼を得るよう、努力すべきだ。我々が必要だと 思わせる必要がある」と言い、マイカとスタスに、「何か 思い付いて欲しい、少年が 興味を惹かれるようなことを」と要求する。それに対し、マイカは「私は反対です。あの子を懐柔して 人間化すべきではありません」と主張する(1枚目の写真)。「我々に そんなことをする権利が?」。「権利だと? 何を言い出す」「権利なら、科学にある」。この間違った発想が隊長の原動力となっている。科学の発展のためなら、何をやってもいいという論理だ。「それに、これは私の決断だ」と言われ、しぶしぶ命令に従い、森へロビーを探しに出かける2人。そこで、倒れている少年を発見する。すごい高熱だ。しかし、ロビーは、マイカを見ると、また、「ママ」と言って微笑む(2枚目の写真)。思わず、「ええ、坊や」と応じるマイカ。「なぜ、探したの?」と訊くロビーに、「それは、君が いなくなったからさ。君がいないと寂しいし、悲しいんだ。分かる?」とスタス。「僕がいないと、ダメ?」。「そうだよ」。「すごいや。僕がいないとダメ。あなたがいてもダメ。変だね」。スタスのロビーに対する好意は、隊長に言われたからでなく、本物になりつつある。ロビーはスタスに、「なぜ、足をくるんでるの?」と訊く。「そうしないと ケガするから」。「ケガ? 僕はケガしないよ」。「慣れてるからね」。「なぜ慣れないの? 慣れるのって難しいの?」。「場合によるね。痛みに慣れるのは 大変なんだ。人間は 怖がり屋なんだ」。「変だよ。人間は痛みが怖い。慣れるのも難しい。だけど、痛がらせてるんだ。僕を」。「でも、そんなこと 望んでない」。「知ってる。望んでないって。だけど、僕に苦痛を与えてるって 理解してない」。複雑な状況なので、会話をそのまま採録した(この場は、3枚目の写真)。
  
  
  

ロビー、スタス、マイカ、ロボットのトムは、湖畔でボール遊びをする。ロビーには初めての体験だ(1枚目の写真)。「楽しかった。こんなに楽しかったの 初めて」と語るロビー。疲れて横になったままのスタスを見て、「疲れたの? 僕は疲れない。どうして? なぜなの?」(2枚目の写真)。「君は、謎の存在だな。やっぱり、君は 本当の人間じゃないんだ」。「じゃあ、何なの… 本当の人間って?」。ロビーに惹かれるようになったスタスが、本気で尋ねる。「なあ、ロビー、一緒に 暮らせないかな、この星で? どう思う? 暮らしたくないかい?」(3枚目の写真)。「うん、いいね。遊べる?」。しかし、ロビーの人間迎合的な態度には直ちに強い警告が。急な痛みにあえぐロビー。「どうした、ロビー!?」。「ダメなんだ、楽しんじゃ ダメなんだ。気分が悪かったけど、今は最悪。僕、真っ二つに裂かれそう。裂かれてもいいけど… 怖いんだ」。そして、ロビーは「僕はもう来ない」と宣言する。一方、マイカは、ここがよく分からないのだが、ロビーと別れるにあたり、頭に装着したカメラをロビーの頭に付けてしまう。その頃、隊長は、地球からの通信を受けていた。そして、「すべてを放棄し、直ちに帰還すべき時だ。君の命が危ない、エヴジェン。少年の命もだ」と強く勧告される。それでも、隊長には従うつもりはない。
  
  
  

船に戻ったスタスとマイカ。ロビーの頭に装着されたカメラは、ロビーの歩いて行く先の様子をモニター画面に映し出している(1枚目の写真)。ロビーは湖の底を通り、父母の宇宙船への入口の前で、いとおしげに岩を撫でている(2枚目の写真: 2節目の1枚目の写真の黄色の矢印と同じ場所)。再び進み出したロビー。カメラは、空を飛んでいるとしか思えない映像を映し出す。それを見た隊長は、「信じられん。マイカ、天才的なアイディアだった。素晴らしいチャンスだ。だが、刺激させるかもしれん。私には、そんな勇気はなかった」。この言葉を聞いていると、マイカの行動が、如何に軽はずみだったか分かる。ロビーは地上に降り立つと、今度は、岩の割れ目から中に入って行く。赤外線カメラに切り替えて見守る4人。すると、最奥部にある大きな洞窟の中に人影のようなものが林立している(3枚目の写真)。ロビーが 急に苦悶の声を上げる。この人間のようなシルエットは、本当の映像なのか、人間に “見せる” ための擬似映像なのかは分からない。もし、“巨大な超個体” なら、このような外観ではないはずだ。
  
  
  

苦しむロビーに耐えられなくなったマイカが、回路を破壊する。隊長は、「何を しでかした? なぜ やった!?」と激怒する。そして、マイカをすべての職務から解任し、部屋から追い出す(1枚目の写真)。しかし、マイカ自身にも責任の一端はある。自室に監禁されたマイカに会いに行ったスタスに、「残酷で、非人道的で、ロビーが苦しむみのを見ていられなかった」と言うが、これは責任逃れでしかない。この女性、結構、自己本位で、映画の結末を見ても、本当にロビーのことが好きだったとは到底思えない。マイカの次に反乱を起こしたのは、船長のヤコブ。「宇宙船の船長として、私は、全乗員の生命に責任があります」「私は、ロビーに対しても責任があります」「私は、地球本部に、遠征を終える旨、報告を送りました」「我々は許容限度を 大幅に逸脱しています」と隊長に宣告する(2枚目の写真)。これで事実上、調査の続行は不可能になった。隊長は、「このような機会は 二度と起きないだろう。分かるか、二度とだ!」「機会を失った全責任は、君にある!」と怒りをぶつけるが、いかんともし難い。その彼が、最後にすがったのがスタス。「トムを、探査型に 再プログラムして洞窟に行かせたい。やってくれないか」と頼むが、「冗談でしょ?」と一蹴される。「なぜだ?」。「ロビーが死ぬかも。今日、殺しかけたんですよ」。「仕方ないだろ。犠牲はつきものだ。さもなくば、人類の発展はない」。隊長の本音だろう。「聞いてるのか? 何とかしろ!」。「イヤだ! うんざりだ!」(3枚目の写真)。
  
  
  

即日撤退のため、ロビーを好きになったスタスが、船外に出て、最後の呼びかけをしている。「ロビー、こおろぎ君、僕を 忘れないで。君とは もっと話したかった。聞いてるんだろ? 僕らは 出て行く。君が望んでたように。でも、君のことは 忘れない。ここに、トムを置いておくからね。モニターが付いてるから、スイッチを入れれば、僕と話せる。待ってるから」(1枚目の写真)。そして、宇宙船は去って行った。船がいなくなってから姿を見せたロビーが、トムの前に座り込む(2枚目の写真)。そして、枝の先でモニターをつつくと、トムに電源が入る。遠くに去ったスタスを想い、宙を見上げるロビー。 そして 去って行く。因みに、「こおろぎ君」というのは、ロビーの母がロビーに付けた愛称」。
  
  
  

ロビーはまた戻ってきて、電源を入れた。同時にスタスの部屋のモニターにも電源が入る。「やあ、スタス。早く 呼びすぎた?」とロビー(1枚目の写真)。「僕、早いか遅いか、よく分からないから。今、休んでた?」。「いいや、そうでも」。「休むのに、時間がかかるんだね。今、話せる?」。「もちろん」。ロビーは、モニターをトムから外すと、近くの岩に立てかけて話を続ける。「何かニュースは? 問題ない? 本部では幸せ?」。「ああ」。「どのくらい、そこにいるの?」(2枚目の写真)。「どのくらい、いて欲しい? 君のために、いるんだ」。モニターの中からスタスが語りかける(3枚目の写真)。「近くで話せて、嬉しいよ」。「いいね。あなたは幸せ、僕も幸せ。こおろぎ君だ」(4枚目の写真)。「スタス、疲れてない? あなたのことが 心配だ。眠らないと」。「僕のことが 心配?」。「そうさ、休んでおいでよ。終わり」。
  
  
  

岩に立てかけたモニターを持ち上げると、トムの胸にはめる(1枚目の写真)。着ているスタスの上着はもうボロボロだ。時間の観念のないロビーは、すぐにスタスを呼び出す。「やあ、スタス、ちょっとは眠った?」。モニターでロビーの顔を見ながら、スタスが「いいや」と答える(2枚目の写真)。「僕が 今 何したいか分かる? できたら、一緒に 遊びたい」。「悪くないな。僕も そうしたい」。「知ってる? これから何するか。話してもいい?」。「いいとも、話そう」。「スタス、訊きたいんだ。いつ、人間は自分で考えるようになるの?」(3枚目の写真)。この思索的な言葉で映画は終わる。
  
  
  

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